BUSINESS COLUMNビジネスコラム

ウェビナー記事 2021.11.16

プロフェッショナル人材のノウハウ伝授 第10話:企業価値を左右する!新時代の社外取締役とは

2021年6月にコーポレートガバナンス・コードが改訂され、プライム市場に上場する企業においては3分の1以上の独立社外取締役の選任が求められている。しかしながら、自社の経営や事業方針に合ったスキルや経験を有する適任者を探し出し、選任することは容易ではない。

 

今回は、東証一部上場企業のトップを務めた2名の顧問に弊社のウェビナーにご登壇いただき『企業価値を左右する!新時代の社外取締役とは』と題し、社外取締役の重要性や適任者の探し方、選任時のポイントなどについてお話いただいた。

 

社外取締役 ウェビナー

 

■登壇顧問のご紹介

登壇者:鶴丸 哲哉(つるまる てつや)氏

ルネサスエレクトロニクス株式会社元代表取締役会長。主に工場などの現場責任者を長く経験し、生産本部長として日本、海外の工場を統括。役員就任後も生産部門を主に統括し新製品立ち上げや生産効率の向上、地球温暖化ガス低減などの環境問題にも積極的に取り組んだ。代表取締役就任後、経営の立て直しや全社構造改革、M&Aの推進を通して黒字化達成など様々な実績を残した。

 

登壇者:野地 彦旬(のじ ひこみつ)氏

横浜ゴム株式会社元代表取締役社長。国内工場長や海外生産子会社社長を経験。現場責任者経験後、各生産拠点のコスト改善、生産効率向上に尽力。代表就任後、中期経営を推進し、売上・利益とも過去最高を達成した。退任後は買収したインド子会社ATGの会長と、アメリカ子会社の代表も務めた。

 

 

1:問われる社外取締役の在り方

東証での独立役員制度の導入が始まった2009年以降、社外取締役の数は毎年増加している。さらに昨今のコーポレートガバナンス改革を求める流れを受け、社外取締役は数の多さだけではなくその在り方も問われている。

 

 

鶴丸氏は、社外取締役の在り方が問われている背景として以下の2点を挙げた。

  • 取締役会の説明責任の重要性、透明性の高まり
  • 社内視点だけではなく、多様な社外視点からの議論がされる必要性の高まり

「このような社会からの要請に応え、企業価値を向上させていく経営戦略において、社外取締役はCEOをトップとした執行側と一緒になり、企業価値を上げステイクホルダーへ報いる役目を担っている」と鶴丸氏は分析する。

 

同じく野地氏も「社外取締役は、株主代表としての責任が大きい」とする。株主が要求するポイントは企業価値を高めながら株価を上げることであり、社外取締役はそのような要求に対して企業価値を高める経営がなされているかを株主に代わって見ていくことが求められているという。「事業を詳しく知っている方ばかりではないので、取締役会での議論内容をまず理解することが執行役としての大きな責任となる。それはつまり株主の皆様への説明責任と同じであるため、社外取締役は株主を代表して事業を理解して取締役会に臨むことが重要だ」と野地氏は語った。

 

 

2:社外取締役の選任方法

■試行錯誤を重ねた道のり

横浜ゴム社では2014年までは古河グループから2名の社外監査役を招聘していた。しかし株主総会前の信任投票で、グループ会社もしくは直接取引のある企業からの候補者だと信任率が激減するケースがあり、またコーポレートガバナンス・コード改訂の流れも鑑みて、新しく社外取締役を選定する流れになったようだ。野地氏は「独立性の担保のため、事業上でのお付き合いが無いところで候補者を探すことに苦労した」と振り返る。

一方ルネサスエレクトロニクス社では、現在取締役6名のうち社外取締役が5名。うち1名は女性、2名は外国人だという。この構成に至るまでは「必ずしもかっこよく進んできたわけではなく、模索して今の形になってきた」と鶴丸氏は語る。

当初は合併前の3社出身者で構成し、そこから徐々に社外取締役の比率や役割を拡大してきたという。選任にあたっては社内議論だけではなく、先進的な経営体制を敷いている他社の取締役の方々と話をして考え方を学ぶなど、試行錯誤してきたようだ。また、コーポレートガバナンス・コード改訂との兼ね合いも随時チェックしたという。

 

 

■ルネサスエレクトロニクス社が求めた2つの人材要件

では、社外取締役の人選にあたりどのような要件を設けたのだろうか。鶴丸氏は社外取締役選任において重要な要件を2つ提言した。

まず、事業分野での議論に参画できることが第一の要件として挙げられる。専門領域の違いはあれ、発展のコアになる事業分野に親和性があることは重要であり、事業の議論に全く参画できないのは社外取締役として不十分であるからだという。

そして第二の要件は、世の中の流れを掴み様々な提案、意見を述べられること。会社は社会の中に孤立しているわけではなく、世の中の流れから影響を受けるため、多様な視点や観点からも議論ができる人材が求められているようだ。「議論するためには、多様な人材、ご経験、知識が必要だ。半導体以外についても多様なことをデイスカッションできる方が適任である」と語った。

 

しかし要件に合致する方が人選できたとしても、受け入れ側の戦略が煮詰まっていないと宝の持ち腐れだ。

  • 選任の目的は何かを明確にし独立性を担保しながら議論する
  • 社外取締役に求める役割をスキルマップを用いて整理し、自社のビジョンと紐づける

人選の前に上記の2点を検討し、社内体制を整備しておくことが重要だと鶴丸氏は分析する。

 

■横浜ゴム社が求めた3つの人材要件

野地氏によると横浜ゴム社で定義した人材要件は3つあるという。

まず、会社を好きになってもらえること。次に、自分は株主の代表だという自覚を持っていること。そして、第三者視点で取締役会を見てもらえること

では、一体どのような手法でこれらの要件に合致するか否かを判断したのか。

野地氏によると、事業の細かい内容についての理解が浅い場合、時間をかけて現場を見てもらう、ということを行ったという。「業界が違うと、歴史も考え方のベースも基準も全く違うため、そこを少しずつ理解していただきたかった。また、都合の良い所ばかり資料として出したくなるので、数字の裏を読み解く力量を持った方を求めて選定していた」と語る。

 

 

続いて、独立性を担保した人材の選定を両社はどのように進めたのか、お二人にうかがった。

 

「自社のネットワークで声をかけた人もいるが、探せない人もいる。そのためにも多様な人材を紹介できる人材紹介会社を活用した」と鶴丸氏は語る。その際には、求める人物像や要件について念入りにディスカッションし、議論を進めながら幅広く紹介してもらえる人材紹介会社を選定すべきだという。とはいえ、人材紹介会社によってデータベースも様々なので選択肢は多めに用意することがオススメのようだ。

 

一方野地氏は、会長や社長の知人経由では独立性の担保が難しく、一番良かった手法は料亭女将の紹介だったという。女将は人柄と自社の相性を見た上で打診をしてくれるため、前述した人材要件に合致していることが多かったという。

また、女性且つ外国籍の社外取締役を探していた際には買収先の外国籍CEOを取締役に迎え入れた経験もあり、グループ会社全体の中から選定するのも一手だと語る。

 

 

3:候補者選定のために必要とされる期間

それでは、就任する株主総会から逆算し社外取締役候補者はいつ頃から選定し始め、確定されているべきなのだろうか。

 

鶴丸氏は十分な準備期間が必要だという。「就任の6か月から10か月ぐらい前から人選を始めるスケジュールが妥当。予期せず断られることもあるため、余裕を持っておいたほうが良い。指名委員会を経て取締役会でも何回か報告が必要になり、また、株主総会で議題を提案する時期もあるため、そこから計算するとあまり時間がない」とする。

 

対して、野地氏は「新任の場合、現在の業務との調整を行う必要があり、万が一就任までに調整がつかない場合はお断りされる、というケースも想定されるため、初めてなら1年半の準備期間は必要なのでは」と分析した。

 

社外取締役のニーズは高まっており、早めに候補者選定を進めていくことが良さそうだ。

4:ウェビナーの中で出た質問内容

Q1,  東証が改革を進めるにあたり、指名委員会の委員長も独立した外部の取締役にするべき、という案が出ているが、どう考えているか?

野地氏は「形の上では賛成だが、実際には難しい」と回答した。

指名委員会では通常長いスパンをかけて中期計画や年度計画等の議論を進めるが、指名委員会委員長を外部の取締役とすると任期が1年間となり、短期的な視点になってしまう恐れがあるからだ。独立性を保つためにもこのような動きは少しずつ進めるべきだが、1年の任期の中でどう進めるのかは想像がつかない、と語った。

 

Q2,社外取締役は社風に合いそうな人がよいか、それとも新しい風を吹かす革命的な人がよいか?

社外取締役として経営の軸を変えるような大きな革命は、母体を崩す恐れがあるため、起こすべきではない」と野地氏は話す。そして「社風が合うかという観点より、その会社に魅力を感じてもらえるかが重要だ」と続けた。その会社に興味を持った株主が株を買ってくれるため、その代表としてまず会社を好きになってもらうことが大前提になるという

鶴丸氏も、社外取締役が会社を好きにならないことには上手く経営が進まない、という意見には賛成だという。執行側のCEOと一緒になって日々苦労を分かち合いながら議論を進めていく土台が重要だそうだ。

もちろん社外取締役には、自社で欠落している新しい視点で会社を見てほしいため、ビジネス書によく書いてある「創造的破壊」を巻き起こすような人材も必要だと考えている、と語った。

 

 

 

5:社外取締役選任に苦戦している企業に伝えたいこと

最後にお二人から、社外取締役選任を進める企業に向けてご意見をいただいた。

 

鶴丸氏は、まずは社外取締役候補になりうる多様な人材を集めることから始めることが重要だとする。自社で持っているネットワークに加え、人材紹介会社に広くお願いし、母数を増やすことが必須のようだ。

ここで問題になるのが、候補者は集まったものの自社でどう議論を進め、評価をするべきか、という点だという。「最終候補者の選任まで済んだ後、改めて第三者のリファレンスを依頼することが、自社の不安を払しょくするうえで有効だ」と語る。自社が社外取締役を選考するうえで重要視していることと第三者の意見が合致しているかをみることで、不安が払しょくでき、自社で行う360度評価における一つの助けになるという。

 

一方野地氏は「同じような業界から社外取締役を選任したとしても、成り立ちが違ったり、使用している言葉も違ったりと、最初の会議で会話が通じないこともあったため、まずは標準語に直して、同じ土俵に立つことが大事になる。そして実際に現場に行ってみてもらうことでだんだんとイメージを持っていただき、議論することが必要なのではないか」と意見を述べた。

また、「事業や経営において失敗したことのある人材は貴重だ。失敗を回避するためのノウハウは経営において重要であり、会社と一緒に成長できる人を選定してほしい」と締めくくった。

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

弊社では鶴丸氏や野地氏といった社外取締役候補、経営のプロフェッショナルに多数ご登録いただいております。「社外取締役を探している」「社外取締役選定のフローがわからない」「自社に適した社外取締役がわからない」等のご相談がございましたら、下記よりお気軽にお問い合わせください。

 

株式会社パソナJOB HUB

電話番号:03-6832-2901

 

パソナ顧問ネットワークとは パソナ顧問ネットワークとは

関連記事

ビジネスを成功に導く
プロフェッショナルの活用を
是非ご相談ください

成長にプロフェッショナルの経験を。