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ウェビナー記事 2021.08.11

プロフェッショナル人材のノウハウ伝授 第7話:M&Aの失敗を回避する3つの法則

 

コロナ禍による不確実性が増す中で、企業は事業の成長を目指し試行錯誤を重ねている。

ポストコロナにおいて一段と飛躍するためには、M&Aを活用した経営戦略が有効手段の一つであると言えるだろう。今回は、M&Aのプロフェッショナルにご登壇いただき「M&Aの失敗を回避する3つの法則」について、お話しいただいた。

 

 

■登壇者 エセンティア・ストゥディオ合同会社 代表社員 髙木孝介(たかぎ・こうすけ)氏

約30年間、国内メガバンク・外資系投資銀行・コンサルティングファーム・投資ファンドなどで、財務アドバイザーやコンサルタント、投資責任者として活躍。M&Aの戦略の策定から買収・売却案件の遂行の支援を行う。また、国内ベンチャー企業においてファイナンス業務および経営企画業務等を統括し、資本提携や50億円以上の資金調達の実行を主導した経験も持つ。M&Aの検討段階からクロージングまで、あらゆるフェーズでの支援実績を有する。

 

≪目次≫

■1:増加するM&Aとその背景

■2:失敗を回避するために重要な3つのプロセス

 ・プロセス1:M&Aの戦略上目的と買収条件の整理

     ┗1-1:戦略上目的の整理

     ┗1-2:買収条件の整理

 ・プロセス2:M&A体制の整備

     ┗・M&A担当部署の設置

     ┗・継続的で横断的な組織作り

 ・プロセス3:案件のソーシング

     ┗・ソーシング依頼先を見極めるポイント

■3:M&Aを成功に導く秘訣

 

 

 

1:増加するM&Aとその背景

近年、日本でのM&A件数は右肩上がりで増えている。2019年には年間4,000件を超え過去最高の記録を更新したことでも話題となった。

髙木氏によると、国内のM&Aの増加にはこれまで2つのピークがあったのだという。

1つ目のピークは、2008年に起きたリーマンショックの2年前となる2006年。日本の景況改善と国内の関連法制整備(投資事業有限責任組合法等)が進んだことによる投資ファンドの活発な活動を背景に大幅に増加した。1990年代の年間M&A件数は、概ね1,000件以下で推移していたが、2006年には年間2,700件を超えるM&Aが行われた。

 

2つ目のピークは2019年。リーマンショック以降、資金留保が必要となる企業が増え世界的にもM&A件数は減少したが、日本国内では徐々に景況が改善し再びM&Aが活発に行われるようになった。加えて、ファンド資金の再増加や中小企業の事業承継の問題が顕著に表れたことに加え、M&A仲介企業が躍進。すると、M&Aに関する情報流通量が飛躍的に向上し、2019年には過去最高の年間M&A件数を記録したのだという。

 

2:失敗を回避するために重要な3つのプロセス

M&Aを実行した企業のうち、約半数の企業が「M&Aが成功したとは言えなかった」と回答した調査結果もあるという 。(グローバル・コンサルティング企業の調査には、その数が三分の二に上るものもある)

それらの企業が、何故「成功しなかった」のかが、今回の重要な点となる。

 

続いて、多くの企業が気になる失敗を回避するためのM&Aのプロセスについて髙木氏に伺った。

 

 

上図に示す通り、M&Aのプロセスには大きく11のプロセスがある。髙木氏によると、M&Aに取り組み始めた企業にとっては、特に最初の3つのプロセスが重要なのだという。

 

失敗を回避するために重要な3つのプロセス

・プロセス1:M&Aの戦略上目的と買収条件の整理

         1-1:戦略上目的の整理

         1-2:買収条件の整理

・プロセス2:M&A体制の整備

・プロセス3:案件のソーシング

 
 

 

■プロセス1:
 M&Aの戦略上目的と買収条件の整理

 

【プロセス1-1:戦略上目的の整理】
 

失敗を回避するためにはまず、「なぜM&Aをするのか」、「自社の事業領域・市場・事業能力(ケイパビリテイ)をどういう方向に持っていき、どういう目的でM&Aを行うのか」など、自社の戦略上の目的を整理し明確にすることが重要となるようだ。

 

では、どのように整理していけばよいのだろうか。髙木氏によると「M&A戦略上の目的は大きく3つに分けられる(下図参照)。 3つの類型のうち自社のM&Aの目的はどれに当てはまるのか、と整理していくことでM&Aの目的がより明確になっていく」という。

 

目的の整理と明確化は、当たり前のことのようにも聞こえるかもしれないがこのような目的の整理ができていないケースが意外と多いのだと髙木氏は語る。

 

 

①規模・効率追求(競合排除)

競合排除を目的としたM&Aは、3つの類型の中では最も“防衛的な目的”であり、市場がの成長があまり期待できなくなった時によくとられる方法だという。

成熟市場の中で自社の競争優位性を高める・維持することを目的とし、自社の事業領域にいる競合他社の事業、もしくは会社ごと買収・合併することによって売上を拡大する方法であり、規模の経済で売上高・収益を増やし効率を上げるためのM&Aだといえる。

銀行の合従連衡などがイメージしやすいのではないだろうか。

 

②シナジー追求

一方、シナジー追求を目的としたM&Aは3つの類型の中では最も“攻め目的”のM&Aだといえる。自社の領域に限定せず、成長市場や新しい商品を自社に取り込み、時間を買うためにM&Aを行う時にとられる方法だ。

大手流通チェーンがEC事業を買収するなど、サービス業やIT企業でよくみられるという。成長性・利益率の高い一部の国内大手電機系メーカーでも積極的に行われている。

 

③「新天地」開拓

新天地開拓目的のM&Aは、成功することが非常に難しいM&Aだという。

自社とシナジーが低い領域にテリトリーを広げ売上を増やすM&Aであり、“利益を買う”というかなりの冒険とも言えるM&Aだ。その多くは剛腕経営者のもと行われ派手な事例としてニュースで取り上げられる。しかし、髙木氏によると「失敗することが多く、よほど厳しい基準と実行力、そして、経営者のぶれないリーダーシップがないと難しい」ようだ。

 

ここまでは、失敗を回避するために重要な3つのプロセスの1つ目として、「戦略上目的の整理」のポイントについて述べてきた。

「目的の整理ができてこそようやく買収先選定のための具体的な判断基準(判断基準)の設定ができるようになる。これらの順序を踏むことは、焦らず無駄なく効果的なM&Aを実行可能とするためにも、また、M&Aの失敗を回避するためにも重要なプロセスだ」と髙木氏は語る。

 

 

【プロセス1-2:買収条件の整理】
 
続いては、買収条件を整理するための判断基準について説明していただいた。

<判断基準(クライテリア)例>

財務面…売上・原価率、主要経費率、利益率、成長率、等

事業面…販売・生産・処理能力、稼働率、歩留率、等

能力面…販路開拓力、技術力、開発能力・体制、品質管理体制、等

管理面…財務経理管理体制、労務管理体制、法務・知的財産管理体制、等

 

判断基準には上記のような4つの側面がある。

M&Aの目的によってどの側面のどの判断基準を大切にするのかといった点や、設定する目標数値も変わってくるのだという。

 

・判断基準設定時の3つの留意点

1つ目の留意点としては、「財務面」や「事業面」は定量評価となるため客観的に判断しやすいが、「能力面」や「管理面」は定性評価が主となるため、関係者間の認識のすり合わせ作業が重要となる点だ。

2つ目の留意点として、判断基準設定は固めすぎないこと、だという。「事前に認識を擦り合わせ後もM&Aを進めていくうちに様々な情報が出てくるため、定めすぎても定めなさすぎてもだめ」なのだという。

最後の3つ目の留意点は、自社リソースの限界値に注意すること、だという。

いくらまで投資するのか、どこまで人材をあてがうのか、どれだけ時間をかけるのか、買収した後にどれだけ支援を続けるのか等、自社の限界値を把握しておくことが大事なのだという。

 

 

■プロセス2: M&A体制の整備

失敗を回避するために重要となる2つ目のプロセスは、社内のM&A体制の整備だ。

 

・M&A担当部署の設置

体制整備においてまず着手すべきは、常設の担当部署を置くことだという。

経営企画の中にM&A担当を置く会社も多いだろうが、なぜ常設の担当部署の立ち上げが必要なのだろうか。髙木氏によると常設のM&A担当部署がないと、良い案件を見つけた際もスムーズな対応が難しくなるなど、適切な判断ができず高値で掴んでしまうことがあるという。また、知見の蓄積や統一的な基準を保つためにも、担当部署を置いた体制作りが大事なのだという。

 

・継続的で横断的な組織作り

そして、「継続的にやるのであれば中核的なM&A統括部門を置き、責任者と担当者を少なくとも一人ずつ置くことが望ましい」という。「彼らは日頃から組織横断的なコミュニケーションや情報収集を行うこと。それと並行し、経理・財務・法務・コンプラなどにもM&A担当を置き、定期的に情報交換や勉強会を行うこと。これらのアクションの積み重ねにより、案件が動き出した時に準備が整った状態で社内の総力を集結できる体制を作ることができる」と語る。

 

 

■プロセス3:効果的なソーシング

失敗を回避するために重要となる3つ目のプロセスは、効果的なソーシングだ。

ソーシングの依頼先は金融機関、仲介会社、外部アドバイザーなど多岐にわたるが、どのようなソーシング依頼先を選定すると良いのだろうか。

 

髙木氏によると「M&Aを戦略的に進められる初期の時点では、あらゆるソーシング依頼先、案件の源にアクセスすると良い。それらに幅広くアクセスして情報収集し、自社視点でソーシング依頼先それぞれの長所・短所を体験的に把握することが中長期的に有効」なのだという。

また、当初は判断基準を多少広めにしておき、情報収集や「相場感」を得るのも効果的なソーシングだといえる。

 

・ソーシング依頼先を見極めるポイント

一方で、「ソーシング依頼先によって情報のレベル差が大きいためよく見て相手を見極める必要がある」と警鐘を鳴らす。

失敗を回避するためのプロセスにも挙げられたが、早い段階から目的・ターゲット・判断基準を定めて事前に整理しておくことで、自社に相性がよいソーシング依頼先を見極めることができるという。ソーシング依頼先によっては「成功報酬=インセンティブ」の傾向が強い場合もあり、自社のペースで必要な手続を進めるべくしっかりとソーシング依頼先グリップする必要があるが、M&Aの目的等が事前に整理されていることでソーシング依頼先に振り回されるリスクも回避できるのだという。

 

 

3:M&Aを成功に導く秘訣

最後に、「成功報酬に依存しないアドバイザーから必要に応じて第三者の意見を得ることも、失敗を回避するために有効だ」と髙木氏は語る。

「売り手側の場合でも黒子としてM&Aの各フェーズで外部の専門家を使い、アドバイスを受けることを勧める。そして、守秘義務を含めた明確な業務委託契約を締結できる、M&Aの実務に精通した第三者を選ぶことがポイントだ。信頼関係が築けたうえで相性の良い相手を選ぶことが大事」なのだという。

ぜひ今後のM&A検討時の参考にしていただきたい。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

弊社では髙木氏をはじめとするM&A支援のプロフェッショナルに多数ご登録いただいております。「M&Aロードマップの策定支援をして欲しい」「M&A担当者への研修実施希望」等のご要望がございましたら、下記のご連絡先にお気軽にお問い合わせください。

 

 

株式会社パソナJOB HUB

電話番号:03-6832-2901

 

 

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