BUSINESS COLUMNビジネスコラム

ウェビナー記事 2021.08.02

プロフェッショナル人材のノウハウ伝授 第6話:企業価値向上の為のSDGs最前線

 

2021年6月11日、金融庁および東京証券取引所により改訂コーポレートガバナンス・コードが施行され、サステナビリティ(持続可能性)に関する課題に取り組んでいくことの重要性がより強調された。まさに今、SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みやESG(環境、社会、統治)経営など、サステナブルな社会の実現へ向けて具体的な対応を迫られている。 

 SDGs達成年として掲げられた2030年まであと10年を切り、多くの企業が本腰をいれて取り組み始めている。 

今、最前線では何が起きているのか。今回はSDGsのプロフェッショナルに語っていただいた。 

 

 

 

■登壇者:長谷川 直哉(はせがわ なおや) 

法政大学 人間環境学部 人間環境学科教授。 

安田火災海上保険株式会社(現・損害保険ジャパン株式会社)入社後、資産運用業務を担当。国際金融情報センターに出向した後、国際経済・金融およびカントリーリスクの調査に従事。1999年には国内最大級のエコファンド(ESG投資)の「ぶなの森」を開発。非財務情報から企業価値の将来像を読み解くファンドを立ち上げ、マネージャーとして活躍。その後も様々な大学で教壇に立ちながら、多種多様な企業でサステナビリティ・アドバイザーとしてSDGs推進を牽引している。 

 

 

=====【目次】=====

 

■1.「社会に良いことをする」だけで終わらせないSDGs浸透のコツ 

■2.SDGsの一丁目一番地は「脱炭素」 

■3.「脱炭素」で注目される「利益の質」

■4.SDGsにおける事例 

 ∟4-1. 女性の犠牲から解放された資源を使った女性向けの時計作り 

 ∟4-2.ステークホルダーから評価された要因 

■5.投資家からの共感の得方 

■6.最後に 

 

 

1.「社会に良いことをする」だけで終わらせないSDGs浸透のコツ 

最近注目のSDGs。2020年度から小学校の学習指導要領にも盛り込まれるなど、一般消費者の認知度や注目度も年々高まっておりSDGsへの取り組みは投資的観点だけではなく、消費者の購買動機や人材獲得のための重要なファクターとして、影響をもたらしている。 

しかし、SDGsの重要性を認識してはいる一方で、どのように社内へ浸透すべきかわからない、と悩む声は多い。様々な企業でSDGs推進アドバイザーとして活躍している長谷川氏は、どのような支援を行っているのだろうか。 

 

SDGsは単に社会に良いことをする、ということではなく、自社の稼ぐ力を充実させるものである、ということを社内に伝えることを意識していると長谷川氏は語る。 

SDGs=コストだけがかかり、利益を生まない慈善活動」といった、誤ったイメージが先行しているケースが多く、これでは社内の理解も協力も得られない。 

 

まず大事なことは、経営トップがリーダーシップを発揮し、会社全体でSDGsに対する価値観を共有すること。次に、経済基盤を整え収益を充実させること。そして、収益とSDGsがどう結びついているのかを社内に分かりやすく共有すること。このようなプロセスで社内への浸透を進めていくべきだという。さらにこれからの社会は、よりSDGsに対する信頼と共感に基づく消費が増えていくため、社外への発信も必要になるそうだ。 

 

 

 

2.SDGsの一丁目一番地は「脱炭素」 

では、SDGsに対する社内浸透が高まった後は、何から具体的に取り組むべきなのだろうか。 

長谷川氏は「まずは『脱炭素』がキーワードだ」と語る。 

下記資料の通り、脱炭素に対し熱心に取り組みCO2削減を試みている企業は、投資家からの期待値が高まり株価が上昇している。

「脱炭素への取り組みは、SDGsの一丁目一番地と理解してほしい」と長谷川氏は語る。  

 

 

 

 

世界的な動きとしても、パリ協定が、2050年までの脱炭素社会の実現を提言しており、IEA(国際エネルギー機関)では、化石燃料への新規投資を2021年に即座停止、2030年までに新車販売のうち電動自転車の割合を60%(現在は5%以下)に、2040年には石炭や石油火力発電の廃止、2050年には再生可能エネルギーの割合を7割へ、という目標を公表している。このような社会情勢に企業も順応していく必要があるということだ 

 

長谷川氏はこう提言する。「パリ協定以降『脱炭素』は世界的なキーワードとなった。長期的な目標が置かれている以上、『脱炭素』は一過性のブームではなくビジネスルールが完全に変わったという事を認識して欲しい」。 

 

3.「脱炭素」で注目される「利益の質」  

これまでは自己資本利益率を上げるROE経営が重要視されており、投資家たちの着目点でもあった。しかし「脱炭素」が注目されている今、ROEを高めたとしてもCO2を多く排出している企業は、評価されにくい時代へと変化しつつある。 

 

「今後は、ROEを確保するという『利益の量』に加え、CO2の排出を極力少なくしていく『利益の質』という、2つの視点から企業は評価されていくだろう」と長谷川氏は分析する。

 

 

 

日本でも、取引先のCO2排出量を把握し、削減に向けた目標を定める動きを行っている企業もある。投資家・銀行・保険会社もみな、責任銀行原則(PRB)、責任投資原則(PRI)、持続可能な保険原則(PSI)の観点で、「炭素排出=企業経営のリスク」という視点を持っているようだ 

 

CO2を排出しない脱炭素社会を目指す」という観点は、もはや当然のビジネスルールとなりつつある。そしてこれを実現する為には、経営構造を根本的に変える必要があるため、経営者にとっても非常に重要な取り組み事項である、ということを改めて認識する必要がありそうだ。 

 

4.SDGsにおける事例 

どうしてもSDGsや脱炭素と言うと、リスク面ばかりが注目されてしまうが、オポチュニティ(好機)を開示することも重要になるようだ。これからの経営では、リスクに対しどのような手当てをするか、だけでなく新しいビジネスを実行していくというオポチュニティ(機会)の二面を開示していくことが求められるという。 

 

例えば、下記のような事例がある。 

 

▼4-1.女性の犠牲から解放された資源を使った女性向けの時計作り 

アフリカ大陸にあるコンゴ共和国では、パソコンや時計に使う貴重な鉱物資源がある。これらは武装勢力の資金源となっており「紛争鉱物」と呼ばれている。紛争鉱物は現地の様々な住民を犠牲にしながら採取が行われており、現地の女性たちが最も犠牲になっているという。 

そこで、ある国内時計メーカーのCSR担当者の働きかけをキッカケに、女性向けに紛争鉱物を使わない時計が開発された。女性の犠牲を多く伴う「紛争鉱物」以外の資源を使い、女性向けの商品を作ることを通して、社会に紛争鉱物問題を問いかけたのだ。この行動は、社会に大きな影響をもたらし、ステークホルダーから評価された。

 

▼4-2.ステークホルダーから評価された要因 

この時計は、会社のパーパス(企業のあるべき姿)・社会課題・製品開発の3つをうまく結びつけたことで生まれた商品といえる。きっかけを作った担当者は、自発的にセミナーや会合に足を運ぶ事で、直面する社会問題や課題を学び、社内に働きかけた事で今回の時計開発に結び付けたという。SDGsの背景にある社会課題を、自社の製品を介して翻訳しステークホルダーに伝えたことが、成功要因になったようだ。既存のサービス・プロダクトとSDGsの間には、意外な箇所に接点があることが多いそうだ。長谷川氏によると、「自社サービスやプロダクトと、SDGsや社会課題とをどう結び付けるか」という視点を常日頃から持ち、業務の中でも議論できる場をつくることが大切だという。

 

 

 

5.投資家からの共感の得方

SDGs対応を推進するにあたり、自社内での進捗の測り方に苦戦する企業も多いという。長谷川氏によると、「将来像の中に定量的な目標を設定し、それに対する進捗を見ていけば問題ない。例えば、『女性役員を10年後に4割にする』という目標は定量的に示すことができるため、そのような目標は追っていくべきである。もちろん実現にあたり数字や定量的に測れる基準ばかりではないので、SDGの進捗について一喜一憂する必要はない」との見解を述べた。

 

つまり、KPIを設定し途中経過を示すだけでなく、最も重要なことは、現状から将来どのような姿・企業になっていたいかを示すことだという。ゴールに対し今どの位置にいるのかを社外へ示し続けることで、投資家からの共感が得られる。しかしこのような報告を丁寧に実施している企業はまだ少ないという。一気に達成する必要はないが、一つ一つ小さな目標をクリアしていくことが求められているようだ。

 

6.最後に

多くの企業が、過去の成功体験で築き上げたビジネスモデルに引きずられているが、今のビジネス環境にはマッチしなくなってきている。多くのエネルギーを必要とするが、ビジネスモデルの変革を行わなければ、社会から受け入れられる経営にはならない。「これからの経営には、事業を通じて社会と企業の持続可能な発展を成し遂げていくことが求められている。また、企業価値向上のためには、信頼感や共感といった要素が重要であるため、『経営トップ自らが動き出し、SDGsにマッチしたビジネスに変革する』という意識を投資家や社会に対して開示することが大切だ」と長谷川氏は締めくくった。

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

コーポレートガバナンス・コード改定で益々注目の集まるSDGs。弊社では、長谷川氏のような「SDGsの戦略策定」を得意とするプロフェッショナルの他、「具体的な事業開発や脱炭素技術支援」「情報発信(IRや広報)」を得意とするプロフェッショナルに多数ご登録いただいております。SDGs対応におけるお悩みがございましたら、下記のご連絡先にお気軽にお問い合わせください。

 

 株式会社パソナJOB HUB  

 電話番号:03-6832-2901 

 

パソナ顧問ネットワークとは パソナ顧問ネットワークとは

関連記事

ビジネスを成功に導く
プロフェッショナルの活用を
是非ご相談ください

成長にプロフェッショナルの経験を。