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ウェビナー記事 2021.07.19

プロフェッショナル人材のノウハウ伝授 第5話:IPOのトレンドと現役監査役が語る上場時のリアル

コロナ禍で一時停滞が見られたIPOが急速に持ち直し、マザーズ上場の増加や、注目のIPO市場である「TOKYO PRO Market(※)」など、IPO市場は活発化している。

4月に開催したウェビナーでは、船井総合研究所のIPOコンサルタントの宮井氏と現役常勤監査役でIPOをご経験された川村氏に登壇いただき、昨今のIPOトレンドや、IPO準備のスケジュール、実際に求められる監査役の人物像などについて対談いただいた。

※TOKYO PRO Marketとは:「TPM」「プロマーケット」と呼ばれている、東京証券取引所(東証)が運営する株式市場の1つで、2009年に新たに開設された市場。

 

 

■登壇者:株式会社船井総合研究所 宮井秀卓(みやい・ひでたか)

東京商工リサーチを経て株式会社モバイルファクトリーの経営企画室長としてIPO準備の責任者を担当した後、取締役として業績を伸ばし東証マザーズに上場。東証一部上場を経験した。2018年から、株式会社船井総合研究所金融M&A支援部マネージャーとしてIPOの支援をしている

 

■登壇者:株式会社Branding Engineer 常勤監査役 川村英樹(かわむら・ひでき)

損害保険会社勤務を経て、イトーキに入社。内部監査・法務・財務経理の実務及び各部門長を歴任。その他にも執行役員制度導入や、物流会社のM&A、関係会社管理体制構築などを手がける。また債務超過に陥った関連会社の役員を務め再建を実施。その後ヘッドハントでヤフーに入社し、業務監査室長として内部監査に従事。

2012年からはIPOを目指すITベンチャー企業の常勤監査役を務め、更に2017年から2021年4月まではBranding Engineer(2020年7月マザーズ上場)の常勤監査役として活躍。5月からはコロニー株式会社の常勤監査役を務めている。

 

目次


■1:IPOにおける5つのトレンド

①「監査難民」問題

②「監査難民」を避けるための早めのショートレビュー

③労務、予算実績管理

④注目の市場「TOKYO PRO Market」

⑤2022年の東証市場区分変更

 

■2:監査の実態と採用すべき監査役の要件

監査項目のチェックポイント

監査役に必要な要件

監査役の採用手法


■3:市場毎に異なる事業継続年数とその実態

プライム市場、スタンダード市場を目指す場合

グロース市場、地方市場を目指す場合

TOKYO PRO Marketを目指す場合

常勤監査役の視点から見た「監査役が参画する最適なタイミング」

 

■4:「困ったら主幹事証券に相談する」でIPOできるほど甘くない

IPO準備の心構え

コーポレートストーリー上のIPO

 

 

1:IPOにおける5つのトレンド

昨今、上場企業数が増加している「TPM」や2022年の東証市場区分変更など、IPOを取り巻く環境は大きく変わってきている。現在のIPOのトレンドについて、船井総合研究所にてチーフコンサルタントとして活躍されている宮井氏にお話いただいた。

 

■トレンド1:「監査難民」問題

 

近年の不正会計事例の増加から監査業務の範囲が増加し監査法人の深刻な人手不足が叫ばれて久しい。一方で上場を目指している企業数は増えており、監査法人が決まらず上場準備が進められない「監査難民」問題が起きているという。

 

「このような状況だからといって監査契約を拙速に進めてはいけない」と宮井氏は警鐘を鳴らす。「IPOはゴールではなく中長期的な目標を達成するための手段。経営者と監査法人がタッグを組んで進めていくことが求められるからこそ信頼関係に基づいた長い付き合いができる監査法人を見つけることが大事」だと言う。

 

 

■トレンド2:「監査難民」を避けるための早めのショートレビュー

 

監査契約のため、直前々期以前のタイミングで監査法人によるショートレビューを入れていることが多いが、最近では監査法人に会社を知ってもらうため更に早めにショートレビューを受ける傾向があるという。「監査難民」を避けるために前倒しで準備を進めた方が良さそうだ。

 

 

■トレンド3:労務、予算実績管理

 

労務管理の体制不備は上場を阻む代表例として挙げられるという。昨今、上場とは関係なく労務管理には厳しくなっているが、「残業代を払っているか」という話になると「未払残業代がないことを説明してください」と言われることもあるため、資料として出せるようにしておくこと、IPOに精通した社労士と連携して対策を図ることが重要だという。

 

そして、宮井氏が「これが一番重かった」と語ったのが「予実管理」だ。

月次決算を行っている会社でも、月次予算、売上予算から税引き後利益までの段階利益予算の策定や事業別の予実管理までは出来ていない会社が多いという。「3日間ある東証審査のうち、半分の時間を予実管理の内容確認に充てるケースもあるため早めに対処すべき」と宮井氏は言う。

 

■トレンド4:注目の市場「TOKYO PRO Market」

 

TPMは新しい市場ではないが、プロ投資家のみが株式を購入できるため審査基準が柔軟で、上場審査基準に定量基準が無く準備コストも他市場と比較して抑えられるメリットがある。

宮井氏によると「その反面、上場時の新株発行や売出しによる資金調達が難しいが上場で何を目指すのかによってはTPMで早期に上場するのも良い。事業承継と絡めて上場を視野に入れている会社にとっては実はメリットが大きい」という。

 

■トレンド5:2022年の東証市場区分変更

 

2022年4月の市場再編の目的は東証1部の企業数を絞り込むのが狙いではあるが、これから上場を目指す企業にとっても大きな変化となるようだ。

流通株式数、流通株式比率、流通時価総額が明確に表示されており、目指す市場を変えなくてはならないことにもなるためこれらをしっかり確認しておくことが必要なようだ。

 

 

 

2:監査の実態と採用すべき監査役の要件

続いて、マザーズ上場会社の常勤監査役として現在も活躍されている川村氏に監査役の視点からお話いただいた。

 

■監査項目のチェックポイント

 

監査を行う際に最も重要な共通項目は「開示を前提とした決算体制構築状況」の項目だという。「体制整備が整っているか」や「開示スケジュールに合わせた決算が完了できるか」が非常に重要で、監査役も実際にそれらに注目して監査するという。

事前に監査項目をよく理解していれば、常勤監査役を採用する前にどういう体制をとればよいのか把握することができ、スムーズにIPOを進めていくことが可能になるというのだ。

 

■監査役に必要な要件

 

監査役の要件については準備段階と上場後のフェーズで異なるという。

【準備段階】

社内のリソースが圧倒的に足りないため、自ら知識不足を学んで補うことが出来る人、もしくは経営企画系・財務系の経験が豊富な人、内部監査・監査役経験がある人にジョインしてもらうのが良い。また、清廉潔白というのも重要な要件だという。加えて、役員を監査する立場なのできちんと物事を言えることも大切なのだそうだ。

【上場後】

新規上場後にやらなくてはいけない重要課題をよく理解している人に入ってもらった方がガバナンスは機能するため、上場企業での役員経験者が望ましいという。

 

■監査役の採用手法

 

ネットワークを持っている人であれば知人経由での紹介や、IPOが近くなると証券会社が監査役を紹介してくれる場合もある。日本監査役協会で登録者を探すこともできるが、エージェントを活用するのが最も効果的だという。登録者数が豊富なので、多くの中から自社に合った人を探すことが出来るためだ。

 

 

3:市場毎に異なる事業継続年数とその実態

上場にあたり事業継続年数(取締役会を設置してからの事業を継続している期間)が明確に記されており、これらは目指す市場によって異なるという。そのポイントを宮井氏にお話いただいた。

 

■プライム市場、スタンダード市場を目指す場合

 

事業継続年数は3年が必要であり、取締役会の具体的な構成には1stステップ、2ndステップの2段階あるという。

 

【1stステップ】

取締役3名。監査役1名の取締役会設置会社とする。

監査役は非常勤でも対応できるが、いずれは必要になるためここで常勤監査役に適任の方がいればそれに越したことはないそうだ。

 

【2ndステップ】

監査役会も1年間運用しなくてはいけないため、n-2(下図参照)の終わりまでに非常勤監査役2名を選任し監査役会を設置する。そのほか、社外取締役の設置についても証券会社から求められる。

 

 

■グロース市場、地方市場を目指す場合

 

事業継続年数は1年必要であるが「2年必要と見積もった方がよい」と宮井氏は言う。

主幹事証券も最低限形式的なことができているかを判断するため、形式的なことは早めにやっておく。取締役会の運営は議事録も残さなくてはならないし、求められている資料も結構あるため1年間は準備期間とし、その後1年間の運用期間がある形で進めた方が良いのだそうだ。

 

 

■TOKYO PRO Marketを目指す場合

 

形式基準として事業継続年数が求められていないが、上場ガイドブックの中に実質的な取締役会が機能していることが求められているので設置しておいたほうが間違いなく、上場の1年前から運営しておいた方が説得力はあるという。

取締役会設置のみで監査役会を設置せず上場したところもあれば、監査役も常勤がいなくて非常勤だけのところで上場したところもあるように、TPMは上場のハードルが低く取締役会の構成は企業によりだいぶ異なるようだ。

 

 

■常勤監査役の視点から見た「監査役が参画する最適なタイミング」

 

実際に常勤監査役としてIPOを経験した川村氏によると、「なるべく早いタイミング」が好ましいようだ。

上場準備を進める中での課題の中には解決までに半年の時間を要するものもあることから、上場スケジュールに遅れが生じる可能性が十分ある。監査役は、課題解決に当たる会社側責任者や証券会社との打ち合わせ等に出席したり、関係者にヒアリングを行うことを通じてなるべく早く準備プロセスにジョインして課題を共有することが重要だという。

 

4:「困ったら主幹事証券に相談する」でIPOできるほど甘くない

■IPO準備の心構え

 

「周りにIPO経験者がいるからそこから情報が入る、また困った時に相談すれば良いからコンサル契約はいらない」と思っている方もいるが、IPO準備はそんなに甘くないと宮井氏は言う。準備にあたり正しい情報を仕入れ、誰が導き、どのように実行するのかを整理できなければいけない。主幹事証券に相談すればよいと思う方も多いが、主幹事証券は一人の営業に対し7,8件担当企業があり、上場させたい企業と保険の企業とを棲み分けをしているのでサポートしてもらえないこともある。優先度をあげてもらうためにアピールしてやっていく必要があるのだという。

 

■コーポレートストーリー上のIPO

 

宮井氏によると「IPO準備の段階から発生する監査報酬や社外取締役の報酬などのコストを高く感じるようであればIPOを目指すこと自体を見直したほうが良いかもしれない。今後もコストはかかることばかりだが、コーポレートストーリーを見据えて先行投資と考えることができれば是非IPOを目指してほしいと思う。コーポレートストーリーを作ったうえで、どのタイミングにIPOを置くか」だと言う。

そして、川村氏は最後にこう締めくくった。「社員も上場に向けてどんどん増えていく中で、会社としては求心力が最も必要となる。上場後も見据えた成長ストーリーが明確になっている事が重要であり、上場してからはじめて取り組める課題もある。上場して終わりではない」と。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

弊社では川村氏を始めとするIPO支援のプロフェッショナルに多数ご登録いただいております。「自社に最適な常勤・非常勤監査役を探している」「IPOにむけて体制構築を支援してほしい」等のお悩みやご要望がございましたら、下記のご連絡先にお気軽にお問い合わせください。

 

株式会社パソナJOB HUB

電話番号:03-6832-2901

 

 

 

 

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