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経営課題 2020.06.01

企業のコンプライアンス遵守に欠かせない社外取締役の要件と選任のポイントとは?

企業の粉飾、不正といったニュースは後を絶たず、企業に対するコンプライアンスの遵守を求める声は日に日に増しています。そうしたなか、2019年12月、「上場企業等に社外取締役の設置を義務付ける」として改正会社法が可決され、成立しました。施行は公布日(2019年12月11日)から起算して1年6か月以内の政令指定日になりますが、国会での成立を受け、今後、社外取締役の選任を検討する企業も増えているのではないでしょうか。しかし、ここで問題となるのが、社外取締役の役割、要件をしっかりと認識することです。コンプライアンスの遵守を実現するためには、企業はどのような社外取締役を選任すべきなのでしょうか? 今回は社外取締役の具体的な役割や要件、そして、会社法改正によって何が変わったのかについてお伝えします。

会社改正法によって社外取締役の設置が義務化

今回の会社改正法によって社外取締役の設置が義務付けられた企業については、冒頭では「上場企業等」としましたが、具体的には次のすべてを満たしている企業が対象です。

  • 監査役会を置いている
  • 株式の譲渡制限がない
  • 資本金が5億円以上または負債総額200億円以上
  • 有価証券報告書の提出義務がある

ただ、2019年5月、東京証券取引所が公表した「東証上場会社コーポレート・ガバナンス白書2019」によると、東証上場企業の97.7%が以前より社外取締役を設置していました。社外取締役の設置は、迅速な経営判断を遅らせる可能性もあり、競合他社に対する先発優位性を保ちにくくなるデメリットがあるともいわれています。

それにもかかわらず、法律によって義務化された理由の一つとして考えられるのは、これまで以上にコーポレートガバナンスの強化を行い、粉飾、不正をなくすことです。実際、今回の会社改正法では、社外取締役を委託された人が業務を遂行していくうえで、社外性を失わないことを規定として設け、より客観的な視点で業務を執行していくよう明記されています。法律による義務化で、企業に社外取締役の役割、設置する意味を明確に理解させることが大きな目的だと考えられます。

社外取締役の役割とは?

では、社外取締役が企業経営においてどのような役割を果たすのかについて、説明します。具体的には次の二点です。

  1. コーポレートガバナンスの監視

社外取締役が果たす役割の一つは、企業の監視です。外部からのチェック機能となり、企業が法令を守り、コンプライアンスを実現し、粉飾、不正を犯さないかどうかを監視します。

  1. 経営方針に対する指導、アドバイス

社外取締役のもう一つの役割が、経営方針に関する指導やアドバイスです。取締役が出席する取締役会、株主総会、経営会議などに参加し、第三者の視点から社長や経営陣に対し、経営方針の指導、アドバイスを行います。企業内部だけの考えで間違った方向へ進んでしまわないよう、利害関係のない者として客観的な見地から軌道修正を行うのも社外取締役の重要な役割です。

このように社外取締役の役割は、あくまでも第三者として、客観的視点を持って企業の監視を行い、経営に関する意見、アドバイスをすることです。そのため、経営だけではなく、法令やコンプライアンスなどさまざまな経験と知見を持っていなければ役割は果たせません。

社外取締役を選任する際に注意すべき要件

会社法による社外取締役を選任する際の要件

社外取締役は誰がなってもよいわけではありません。会社法により、次の要件すべてに該当している必要があります。

  1. 現在及び取締役就任前 10 年間、当該会社またはその子会社の業務執行取締役などとして携わっていないこと
  2. 取締役就任前 10 年内に当該会社またはその子会社の取締役・会計参与・監査役であったことがある者にあっては、その取締役等就任の前 10 年間、当該会社またはその子会社の業務執行取締役等ではなかったこと
  3. 当該会社の親会社等(自然人であるものに限る)、または親会社等の取締役・執行役・支配人その他の使用人ではないこと
  4. 当該会社の親会社等の子会社(=兄弟会社)等(当該会社およびその子会社を除く)の業務執行取締役等ではないこと
  5. 当該会社の取締役・執行役・支配人その他の重要な使用人または親会社等(自然人であるものに限る)の配偶者・2親等以内の親族でないこと

社外取締役の重要な任務である、コーポレートガバナンスの監視を行うには、ここで挙げられているように、会社経営陣はもちろん、親会社、兄弟会社、大株主などの近しいものからの独立性が保たれていなければなりません。

自社に最適な社外取締役を選任するためのポイント

社外取締役の選任について法律で定められた要件は上述したとおりですが、これはあくまでも最低条件にすぎません。自社にとって最適な社外取締役を選任するには、自社の取締役が持つスキルを把握し、彼らに足りないスキルを持った人物を選任する必要があるでしょう。

経済産業省は2017年3月に発表した「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」において、一つの指名プロセスとして、「スキルマトリックス」の作成を紹介しています。

スキルマトリックスとは、取締役会に必要な資質を書き出したうえで表にまとめ、そのなかで既存の取締役がどの資質を持ち合わせているかをチェックしていくものです。この表をもとに、自社に足りていない資質を洗い出し、その資質を持つ社外取締役を選任します。

◆取締役に求める資質とそれを満たす取締役の検討方法の例

 

この例で見ると、現状では「財務全般」の資質を持った取締役が不在だとわかります。そこで、新たに社外取締役を選任するのであれば、財務全般に関して資質を持った人物を選任すれば、現状の取締役会の弱い部分を補えます。

なお、この資質の部分に関しては、必ずしもこれでなければならないわけではありません。どういった資質を選択するかは企業によって異なります。現状で足りないものを補うといった観点で選ぶ方法もありますが、企業の将来像を見据えたうえで、何を強化したいのかを考えて選択する方法もあります。そうすることで、企業の成長戦略に沿った取締役会の運営が可能になるでしょう。

社外取締役の選任は知識を得たうえで十分な検討を

特に大企業に関しては、その多くが社外取締役を設置しています。しかし、それでも企業の不祥事はなかなかなくなりません。今回の会社改正法は、そうした背景のなか、コーポレートガバナンスの強化を大きな目的とし、社外取締役の設置を法律で義務付けたものです。

実際の施行は公布日(2019年12月11日)から起算して1年6か月以内の政令指定日ですが、現状、社外取締役を設置していない企業はできるだけ早い選任をする必要があります。なぜなら社外取締役はさまざまな要件を満たしたうえで、コーポレートガバナンスの監視、企業に対する指導、アドバイスなど、多くの経験が必要だからです。

社外取締役はコーポレートガバナンスに関して多くの知見を持っていることが必要で、さらに自社の課題を明確にし、弱いと思われる部分のエキスパートであることも欠かせません。その両方を兼ね備えた人材を探すことで、自社にとって大きな効果をもたらしてくれる可能性が高まります。

パソナ顧問ネットワークでは、コーポレートガバナンスの実現をサポートするために「社外取締役・社外監査役」紹介サービスを提供しています。社外取締役選定のポイントや報酬の目安、選定時期など、ご不明点はお問合せください。

 

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