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経営課題 2020.05.29

すでに始まっているデジタルトランスフォーメーションに企業はどう対応するか?

スマホやパソコンなどのデジタルデバイスだけではなく、あらゆるものにICTが活用される未来。ビジネスの現場ではどのような変化が起こるのでしょうか。今回は着々と進むデジタルトランスフォーメーションについて考察します。

デジタルトランスフォーメーションとは何か?

そもそもデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation、略称はDX)とは、どのような概念なのでしょうか。これは、ウメオ大学(スウェーデン)のエリック・ストルターマン教授が2004年に提唱した概念で、「IT技術の浸透させることによって、人々の生活をより良いものへと変えること」というものです。

具体的に言えば、従来の社会的インフラ、制度、組織、生産方法など、ありとあらゆるものにAI(Artificial Intelligence)やICT(Information and Communication Technology)などのデジタル技術が導入され、それに伴い、社会や経済のシステムがテクノロジーの進歩に合わせて変化していく世界です。テクノロジーの進歩があり、その能力を最大限に引き出すことを目的として社会や経済のシステムが再構築されていきます。

テクノロジーが進化することによって、サイバー空間と現実世界が連続的に、シームレスにつながっていきます。従来は部分最適によって問題を解決していたのに対し、デジタルトランスフォーメーションが行われた世界では、全体最適によって問題を解決することができるようになります。

例えば、道路の交通渋滞という問題があります。従来の世界では交通渋滞をなくそうとするときに、高速道路の坂道を減らす、急ブレーキを注意する看板を立てて後続車の渋滞を防ぐなど、部分的な問題解決を行っていました。それがテクノロジーによって、交通状況や個々の車の現在地をデータとして分析、時間帯や交通量を考慮に入れて信号機を自動制御するなど、全体最適で問題を解決できるようになります。自動車の自動運転技術がさらに発達すれば、交通渋滞という社会問題自体がなくなってしまうでしょう。

ビジネスの世界でもモノから収集したデータを活用することで、新たなサービスやビジネスモデルが作られていきます。モノから取集したデータを利用する技術は、シェアリングエコノミーでも使われることがありますが、この「シェアリングエコノミー」も新たなビジネスの代表的な考え方でしょう。商品を購入してモノを所有するのではなく、必要なときだけ利用する。モノを所有すること自体に、あまり意味はなくなっていきます。高いお金を出して車を購入する必要はなく、アプリを利用して必要な時にライドシェアをしたり、カーシェアをしたりする。必要なものはフリマアプリで購入し、いらなくなったらフリマアプリで売却する。このようなビジネスでは、モノを一時的に利用しているだけで、所有することに価値が置かれていません。このように、デジタルトランスフォーメーションが実現したビジネスの世界では、産業構造の変化や価値観の変化が起こることが予想されています。

企業がやるべきデジタルトランスフォーメーション

大きな社会変革をもたらすデジタルトランスフォーメーション。経済産業省は、2025年までに既存のシステムを刷新してデジタルトランスフォーメーションを実現することを目標としています。これはいわゆる「2025年の崖」と言われています。さらに、デジタルトランスフォーメーションが実現できない場合、2025年以降、最大で毎年12兆円の経済的な損失が生じるという予想がされています。

このような変革が急務の状況のなかで、企業はどのような対策をすればよいのでしょうか。簡単に言えば、既存システムの刷新が必要になります。テクノロジーの進歩に取り残された既存システムは、「レガシーシステム」と呼ばれ、デジタルトランスフォーメーションを実現する障害となっているからです。

レガシーシステムは、「老朽化」「複雑化」「ブラックボックス化」という問題を抱えています。

既存のシステムは古いパッケージでシステムが構築されています。ですから、故障等のトラブルが発生した場合に代替がききません。加えて、今後、古いシステムを扱える人材自体が少なくなり、技術者の確保が難しくなるという問題が発生することも予測されます。

さらに長年使われてきたシステムは複雑化し、システムの追加や変更が難しくなっています。そのため、時代に合っていない古いシステムを使い続けなければならず、現在の業務に支障が出る場合もあります。

また、古いシステムはドキュメントなどが整備されておらず、属人的な運用が続けられてきました。ブラックボックス化したシステムは、トラブルが発生したときに原因の特定が難しく、現行システムを再現すること自体が困難な場合があります。

レガシーシステムを放置している原因として、ユーザーである企業がシステムの構築や運用をベンダーに任せきりしている現実があります。ベンダー側もレガシーシステムを運用する業務に人員を割いているので、最新のデジタル技術を担う人材を確保できていない現場があります。ですから、企業においてはIT人材の育成や確保がデジタルトランスフォーメーションを実現するためのポイントになってきます。

しかし、IT人材を育成、登用することは、日本企業の終身雇用制度とは相容れない部分が多くあります。IT人材は、どのようなスキルがあり、どのような問題を技術によって解決できるかということに価値があります。終身雇用制度で用いられる入社年度や在職期間という基準では、IT人材をうまく活用することができません。大学教育においても、他国に比べ日本のIT教育は遅れていると言われています。このようにIT人材を育成確保すると言うのは簡単ですが、雇用システムや教育システムなどを含めた包括的な問題解決が求められています。

デジタルトランスフォーメーションの具体例

最後に、デジタルトランスフォーメーションが成功した場合に、具体的にどのようなシステムやサービスが実現できるのかを見ていきます。すでに多くのビジネス分野で最新テクノロジーが導入され、今までになかった価値が創造されています。

飲食業

飲食業においては原価管理のシステム化が行われています。売り上げの管理システムと食材の原価データを連携させることで、毎日の利益をより正確に把握することが可能です。商品の価格や企画はデジタル端末で簡単に確認できます。発注した数量、合計金額、納品日等、細かなデータをすぐに把握できるので、経営判断をより正確にできるようになります。デジタルデータで経営状況を認識することで、新メニューや期間限定メニューなど、変更する項目が頻繁にあっても一品ごとに原価を厳格に管理できます。顧客へのサービスとして、例えばメニューに使用されているアレルゲンの一覧表を作成し、毎月最新版に更新して自社サイトで公開することが可能です。また経営に関わるデータをデジタルで運用することで、業務改善とコストダウンを同時に実現することができます。

金融業

金融業では、顔認証機能を搭載した次世代のATMが開発されています。フィンテックの技術革新によって、高い認証精度を誇るATMの運用が可能になります。この次世代ATMでは、顔認証だけではなく、本人確認書類を自動で読み取るQRコードによる決済、Bluetoothを活用したATM利用者のスマートフォンへの情報発信など、さまざまな機能が利用できます。

物流業

物流業においては、船舶の衝突リスクを予測するAIが開発されました。交通量の多い航路においては、船舶同士の情報提供によって安全を確保していますが、さらに安全性を高めるためにこうしたAI技術の導入が検討されています。海上の交通状況を分析し船舶の動向を予測して、船舶の衝突リスクを軽減させる試みです。今後、リアルタイムでデータを収集して航行している船舶に情報提供することができればより安全な運行が可能です。

デジタルトランスフォーメーションは止められない

デジタル技術の進化を止めることはできません。ビジネスの現場にいる人間が変化に対応できなければ、淘汰されることは明らかです。IT人材の育成や確保を視野に入れ、デジタルな社会を生き抜きましょう。

参考:

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