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組織人事課題 2020.05.01

企業の安定した成長を支える従業員の離職防止対策

多くの企業にとって従業員の離職を防止することは重要かつ喫緊の課題です。厚生労働省が毎年発表している「新規学卒者の離職状況」によると、入社から3年目までの離職率は非常に高い数字となっています。また、ベテラン社員の離職も企業にとっては大きな損失になるため、若年層に限らず、どの年齢層においても離職を防ぐことは大切です。では、従業員の離職を防止し、定着させるためにはどういった施策が効果的なのでしょうか。今回は、従業員の定着が企業にもたらすメリットと具体的な離職防止対策についてお伝えします。

企業にとって従業員が定着することのメリット

冒頭でも触れたように、厚生労働省が発表している「新規学卒者の離職状況」によると、新規学卒者の入社から3年目までの離職率は非常に高く、平成28年3月に大学を卒業した就職者の3年目までの離職率は32%。短大生で42%と、およそ3人に1人以上が離職しています。また、同じく厚生労働省が発表している「平成30年雇用動向調査結果の概況」の年齢階級別入職率・離職率を見ると、男性、女性ともに30代を超えると離職率は下がり、55~59歳までは、ある程度、安定した数字となっています。このことから、20代の従業員の離職を抑えることができれば、企業全体の離職率も大きく減少させることが可能だと言えるでしょう。

離職率が高いことで生まれるデメリットは少なくありません。逆に離職率を抑え、従業員を定着させられれば、次のようなメリットが考えられます。

  • 顧客や取引先からの信頼性が高まる

顧客や取引先の視点で考えると、自社の担当者が頻繁に変われば、その都度、改めて関係性を構築する必要が生じることになります。常に同じ従業員が担当していれば、関係性ができあがった状態で取引が行え、効率も良くなることで、企業に対する信頼性も高まります。

  • 常に一定品質以上のサービス提供が可能になる

営業やマーケティングなどの部署で頻繁に従業員の入れ替わりがあると、新しい担当者が商品知識を得るのに時間を要することになり、その間に提供するサービスの質も低下する可能性が高まります。しかし、担当者が変わらなければ、常に一定品質以上のサービス提供が可能です。

  • 人材採用、育成コストを削減できる

離職率が高くなれば、当然、その都度、人員の補充が必要となります。そのため、離職率が高い企業は恒常的に人材採用、育成のためのコストをかけなければなりません。離職率が低ければ、そうしたコストを、事業にかけることもできるほか、従業員に還元することもでき、従業員満足度の向上が期待できます。

  • 従業員離職率が低いという評判が入社希望者の増加につながる

離職率が低いことは、企業の評判を高め、入社希望者の増加につながります。実際、就職四季報には、入社3年目までの離職率が掲載され、求職者にとって企業を選ぶ際の重要なポイントの1つとなっています。また、入社希望者が増加すれば、求人広告費を抑えられることになり、さらなる人材採用コストの削減効果も生み出します。

離職の理由から自社の課題を知ることの重要性

離職率を下げるためには、なぜ離職をしてしまうのか、その理由を知ることから始める必要があります。そこで、ここでは前出の「平成30年雇用動向調査結果の概況」から、転職入職者が前職を辞めた理由を見ていきます。退職理由は男女別に挙げられており、男女どちらも一番多いのは「出向を含むその他の理由」で、次が「定年・契約期間の満了」のため。問題は3位以降ですが、3~5位は次のとおりです。

  • 男性の前職を辞めた理由 3~5位

3位 給料等収入が少なかった 10.2%

4位 労働時間、休日等の労働条件が悪かった 10.0%

5位 職場の人間関係が好ましくなかった 7.7%

  • 女性の前職を辞めた理由 3~5位

3位 労働時間、休日等の労働条件が悪かった 13.4%

4位 職場の人間関係が好ましくなかった 11.8%

5位 給料等収入が少なかった 8.8%

この結果を見ると男性と女性で離職順位に違いがあることが分かります。もちろんこの結果だけですべてを判断することはできませんが、性別によっても離職する理由が異なることは把握しておく必要があります。離職の根本の理由を知ることが、離職防止につながることは理解しておかなければなりません。

また、2018年1月、政府が改訂した「モデル就業規則」により、働き方改革の一環として副業・兼業に関する規定を新設したことも考慮しておく必要があります。総務省統計局が発表した「平成29年(2017年)就業構造基本調査」によると、モデル就業規則改訂が行われた1年前の段階で副業者比率は全体で4.0%。正社員に至ってはわずか2%ですが、この改訂により今後はこの数字が急伸していくことも予測できます。

副業が普及していくと、金銭面の不満はある程度、解消される可能性が高まります。そうなれば、それ以外の面で従業員を引き付けるものがなければ、やはり離職率を下げることは難しくなると考えてよいでしょう。

離職防止をするための具体的な対策

では、実際に従業員の離職を防止するためには具体的にどういった対策が必要なのでしょうか。ここでは主な4つの対策を紹介します。

  • 待遇の改善

単純に給与をアップすることももちろん効果はありますが、待遇を決めるための評価基準を明確にすることも重要です。「給料等収入が少なかった」ことを理由に離職する従業員の多くは、評価基準が分からず不当に低い評価をされていると思い込んでしまうケースも少なくありません。そこで、評価基準をオープンにし、従業員間で不公平感が出ないよう、納得したうえで待遇を決めるようにします。

  • 福利厚生や職場環境の改善

福利厚生は、家賃補助やレジャー施設の割引といった金銭面のサポートをするものだけではありません。資格取得サポートや新たな業務への教育サポートなど、自己実現や仕事に対し、直接的にモチベーションアップとなる福利厚生の充実も離職率低下に大きな効果を発揮します。また、集中して業務ができる設備やゆったりと落ち着いて休憩できる設備を整えるなど、快適に働ける職場環境の改善も欠かせません。

  • コミュニケーションを増やしフォロー体制を確立する

多くの場合、職場の人間関係で悩んでしまう原因の1つとして、コミュニケーションが不足していることが挙げられます。そのため、上司がこまめにコミュニケーションを取るようにすることで、いつでもフォローできる体制であることを従業員にしっかりと伝えるようにします。

  • MBOやOKR、ホラクラシーなどによって、従業員が主体性を持って働ける環境をつくる

業務に対するモチベーションをアップさせることは、離職率防止に大きな影響を与えます。そこで、上司と部下で目標を共有し、そのプロセスを評価基準とするMBO(Management By Objective:目標管理制度)、企業、部署、個人で目標と成果指標を設定し、同じゴールへ目指すOKR(Objectives and Key Results:目標と成果指標)、そして、従業員が主体性を持って働ける環境であるホラクラシー(フラットな組織形態)などを取り入れ、常にモチベーションを高く保つための働き方へと改善していくことも、離職率低下の大きなポイントとなるでしょう。

従業員のモチベーションをアップさせることが離職防止のポイント

厚生労働省による「雇用動向調査」の結果を見ても、給与や労働条件の改善が離職防止に効果を発揮することが予想できます。しかし、単純に給与を上げたり、福利厚生を充実させたりすれば離職防止につながるかといえば、そうではありません。重要なことは、どのような対策を行うにしても、それが従業員のモチベーションアップにつながるものでなくてはならない点にあります。

資格取得や具体的な成果などを基準として取り入れた給与制度を確立する、従業員が自ら目標を立て実践していける環境をつくるなど、まずモチベーションアップを実現させる。そして、その先に待遇アップを設けるといった形にすることが、自身の成長、ひいては会社の利益につながっていくのです。

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