BUSINESS COLUMNビジネスコラム

経営課題 2019.12.04

成長段階に応じた資金調達で会社をスケールさせる。「シリーズA・B・C」

開業時はもとより、事業をスケール(拡大)させていくには適切なタイミングで資金調達を行い、会社を成長させていかなければなりません。自己資金で賄えれば問題ありませんが、ほとんどの場合、何かしらの手段で資金調達が必要です。特にもともと数人だった従業員が数十人~百人を超えて成長した場合などIPO(株式の新規公開)を目指すうえでは欠かせません。そこで、今回はさまざまな資金調達方法と、資金調達の「シリーズA・B・C」について説明します。

資金調達、その一般的な方法

企業が資金調達をする方法は、株式を発行し、その対価として資金を出してもらう方法(エクイティファイナンス)と他者から資金を借りる方法(デットファイナンス)の大きく2つに分けられます。ここではそれぞれの具体的な方法を見ていきます。

  • エクイティファイナンスの種類

エクイティファイナンスには、大きく分けて、1. 時価で新株を発行し、資金調達を行う「公募(時価発行増資)」、2. 新株を発行する際に割り当てを受ける権利を既存株主に対し、保有株数に応じて与えて増資する「株主割当増資」、3. 株主であるかないかにかかわわらず、特定の第三者に新株を引き受ける権利を与えて増資する「第三者割当増資」、4. 一定の価格で発行する企業株式に転換する権利を付けた社債を発行する「転換社債型新株予約権付社債」の4種類があります。

エクイティファイナンスは、基本的に株式を発行する対価としての資金調達のため、返済義務がないこと、会計上でも調達した資金は資本金に組み入れる形となり、自己資本比率が増加することが大きな特徴です。

従来はベンチャーキャピタルやエンジェル投資家のほか、上場企業など限られた人からしか調達できませんでしたが、最近ではクラウドファンディングの形を利用し、新株予約権や株式をリターンとする「株式投資型クラウドファンディング」といった方法が登場しています。この方法であれば、いくつかの条件はありますが、非上場であっても個人から少額ずつの投資を受けることが可能になりました。

  • デットファイナンス

金融機関からの借り入れ、シンジケートローンの利用、普通社債の発行など他者から資金となるお金を借り受けることで資金を調達するのがデットファイナンスと呼ばれる方法です。

エクイティファイナンスは返済義務がなく、自己資本比率も増加するという特徴がありますが、デットファイナンスは借入金のため、返済義務はもちろん利息の支払いも生じるうえ、会計処理の際には負債として計上されます。

これだけを見るとデットファイナンスにはメリットがないと思われるかもしれません。しかし、エクイティファイナンスに比べ、融資の選択肢が多いこと、返済の義務はありますが、融資先に経営権を握られる可能性が少ないことなどメリットもあります。また、この2つの方法以外でも政府や自治体が提供している助成金や補助金、株式投資型以外のクラウドファンディングなどの資金調達方法があります。

資金調達でよく耳にする「シリーズA・B・C」とは?

多くの企業で資金調達が必要となるのは開業時だけではありません。事業が大きくなるチャンスが訪れたときに資金が足りないとなれば成長スピードが鈍ることとなり、場合によっては競合に大きな差を付けられてしまうリスクも生じます。これを防ぐには事業の成長スピードに合わせた資金調達が必要です。当然ながら企業が成長し規模が大きくなれば開業時と変わらない資金調達では間に合いません。そこで、主にベンチャーキャピタルの投資の際に用いられるのが「シリーズA・B・C」です。

このシリーズA・B・Cとは、投資ラウンドという資金調達の段階を表したもので、具体的には次のようなものです。

  • シード期

シリーズA・B・Cに至る前段階で、まだ起業前、もしくは起業はしているものの商品やサービスがリリースされる前の段階を指します。この段階での資金調達方法としては、エクイティファイナンス、デットファイナンスの双方が考えられますが、まだ実績がないということで、知人や親族を含む限られた投資家によるものが主です。投資額は数百万円から1,000万円未満ほどです。

  • シリーズA

事業がスタートし、少しずつ顧客が増え始めた段階です。まだ先が見えにくく、投資に見合った収益を得ることが難しい段階であることから、もう一段階上に行くために人材や設備に新たな投資が必要な時期です。会社や商品が世間一般にある程度の認知は得られるようになったことから、資金調達先はベンチャーキャピタルやエンジェル投資家、金融機関による融資の双方が候補になり得ます。投資額は1,000万円~3,000万円が相場です。

  • シリーズB

事業の認知が進み、経営が安定し、先が見えるようになった段階です。自社のビジネスモデルも確立し、目先のことだけではなく数年先を見据えた長期的な経営計画を立てる時期です。この段階になると、シリーズAとは異なり、ベンチャーキャピタルのほうからも注目されることが増え、さらに成長していくための設備投資や人材確保が必要です。投資額は億を超え、状況によっては十億円になる場合もあります。

  • シリーズC

スタートアップ時の成長も最終局面を迎え、安定した黒字経営を実現し、次の戦略としてIPOやM&Aも意識する段階です。企業規模の拡大を目指し、全国展開もしくは海外進出も含め一段階、二段階上の計画を立てる時期です。これまで以上に内外に広く自社の存在をアピールしていくための投資が必要となるため、投資額の相場は億単位で、十億円を超える場合もあります。

資金調達を行う際の注意点

投資ラウンドにもよりますが、資金調達は企業側が望めば必ず実現するわけではありません。特にまだ実績も信用もないシード期において、仮に金融機関から創業融資を得る場合、借入申込書、創業計画書、資金繰り表など多数の書類提出を求められます。さらに通常、融資が成立するまでに1ヶ月くらいか、場合によってはそれ以上かかることもあるため、それまでの間の運転資金はあらかじめ用意しておかなくてはなりません。

また、どういった方法であっても投資ラウンドにかかわらず資金調達を成功させるポイントは事業計画書において、事業内容を正確に伝えること、売上目標やコストなどの数字を明確にすることです。そのうえで投資家や融資先に質問された時にしっかりと数字の根拠を説明できるようにすることが重要です。また、返済に関してもしっかりとした計画を立てておけば、より成功の可能性が高まります。シード期などはまだ明確な数字を出すことは難しいかもしれませんが、アイデアだけでは資金調達することは困難です。

資金調達先は投資ラウンドによって変わってきますが、選択のポイントはシード期、シリーズAぐらいまでは実績が少なくても融資を受けられる可能性が高いデットファイナンス、特に日本政策金融公庫の融資がおすすめです。シリーズAからBにかけては、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家。そして、シリーズCの段階になれば、民間の金融機関からも資金調達がしやすくなります。さらにはIPOやM&Aも候補の1つとなるでしょう。

資金調達、成功のポイントは自己資金も含め計画性を持って進めていくこと

すべて自己資金で無借金経営ができるのは理想かもしれませんが、起業時を除いて自己資金だけで賄っていける経営者はそういるわけではありません。そのため、企業の成長段階とその後の目的に応じて適切な資金調達方法を選択し、確実に成長の原資を手に入れていくことが成長の近道です。

どの方法にもメリット・デメリットがあるため、現在の状況を把握したうえで無理のない最適な選択をすること、そして、シリーズA・B・Cを念頭に、長期的な視野で計画性を持って臨むことが資金調達を成功させるポイントとなるでしょう。

パソナ顧問ネットワークとは パソナ顧問ネットワークとは

関連記事

ビジネスを成功に導く
プロフェッショナルの活用を
是非ご相談ください

成長にプロフェッショナルの経験を。