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組織人事課題 2019.10.29

人事制度で社員のモチベーションを高める!新・人事制度設計法

2019年8月9日付のウェブ版産経新聞によれば、富士通は新人事制度を導入することを発表しています。この新人事制度は職務を限定する「ジョブ型」雇用と高度人材処遇を柱としており、市場価値の高い能力を持つ社員に対しては、年齢に関係なく高い報酬を支払う方針です。たとえば、人工知能やセキュリティー分野など、今後ますます需要が伸びるデジタル技術を扱える人材には、30代で3,000万〜4,000万円程度の報酬まで視野に入れています。

様々な変化が今後起こりうる社会で勝ち抜いていくためにも、社員一人ひとりのモチベーションを高めていく仕掛けは重要です。そのためには、人事制度の改革が1つの手段となり得ます。今回は人事制度を刷新するために必要なポイントをご紹介します。

転職希望者が考える自社の不満第1位は、人事評価制度

組織の人事制度がうまく機能していなければ、社員のモチベーションの低下や人材流出など、さまざまなデメリットが発生します。

株式会社あしたのチームの調査によれば、転職希望者が考える自社への不満第1位は「人事評価制度(81.7%)」という結果が出ています。続いて「給与(79.0%)」「自分が成長できる環境かどうか(72.7%)」などが挙げられており、金銭面や職場環境に対する不満が転職を考える要因になっているといえます。「給与」より「人事評価制度」への不満が高いことから、会社員が自分の仕事が認められることを重要視していることがわかります。

〈現在の会社に対する不満は何か〉

  1. 人事評価制度(7%)
  2. 給与(0%)
  3. 自分が成長できる環境かどうか(7%)

さらに、人事評価制度に関する具体的な不満を聞いてみると、「好き嫌い評価である(47.3%)」「評価の基準が不透明(41.6%)」「行動を評価してくれない(38.4%)」がベスト3という結果でした。明確な基準がない、基準があってもわかりづらい人事制度が、社員の大きな不満を生み出していることがわかります。上司の気分や好みで仕事を評価され、自分の仕事に対して正当な評価を受けていないと感じることは、社員にとってモチベーションが下がる大きな要因といえるでしょう。

〈人事評価制度に関する具体的な不満〉

  1. 好き嫌い評価である(3%)
  2. 評価の基準が不透明(6%)
  3. 行動を評価してくれない(4%)

このアンケートでは「結果を出しても称賛はなく、報酬も変わらない」「会社の利益は上がっているのに、給与体系の改善や昇級は行われない」といった声があがっています。明確な評価基準で自分の仕事がしっかりと評価され、それが給与に反映されることが、会社員の大きなモチベーションになります。したがって、人事制度においては、明確な基準で仕事の成果を認められる実感をいかに生み出すかが大きなポイントになるようです。

人事制度の基本

そもそも人事制度とは、会社が貴重な経営資源である従業員をどのように扱うかを示すものです。従業員に役割を与え、その仕事の成果を評価し、対価として給料を支払いますから、会社と従業員の関係において、最も重要な制度の1つといえるでしょう。

人事制度は「給料の根拠となるルール」でもあるので、その基準は明確であることが求められます。「会社は社員に対して何を求めているのか」がわからなければ、社員はどのように仕事を進めていけばいいかわからなくなってしまうからです。

さらに、人事制度の役割は社員の給料を決定するだけにとどまりません。会社が社員を評価することによって、社員のやる気や成長を促進し、目標達成を促す目的があります。この「目標」は、社員個人の目標と企業組織の目標をともに達成できることが理想です。社員が成長し、目標達成に意欲的であればおのずと生産性は向上します。結果的に、組織全体のパフォーマンス向上に貢献することになります。

会社は社員に何を求めているか

会社が社員に求めるものの前提として、人事ポリシーがあります。人事ポリシーとは、会社の社員に対する考え方です。例えば、定年まで働き、長く組織にいて欲しいのか、短期に成果を上げ、人材の流動性を高めるのか。トップダウンの命令によって組織的に社員を動員するのか、社員の発想を大切にしてボトムアップで意見を吸い上げ、経営に反映させるのか。組織全体として社員の給与に差をつけるのか、あまり差をつけないのか。会社は、社員のことをどう捉え、どのように扱うかという基本的なスタンスです。この人事ポリシーは、会社や業態、雇用形態や職種によってさまざまなものがあり、どれが正しいというものは存在しません。しかし、人事制度を作るうえでは方向性を決めておく必要があります。この人事ポリシーを定めたうえで、人事制度を作っていきます。

会社が社員に何を求めるかによって、評価の基準は変わります。勤続・年齢主義、年功主義、職位主義、能力主義、成果主義などさまざまな基準が存在し、それぞれに長所と短所があります。その基準を明確に社員に示すことが大切です。

人事制度には4つの要素が必要です。それは①要件、②評価、③給与、④育成です。

〈人事制度の4要素〉

  1. 要件
  2. 評価
  3. 給与
  4. 育成

①要件とは、企業側が社員に求めるものを明確にする要件設定のことです。例えば、企業が掲げる経営理念を行動の指針として設定できます。所属している企業の価値観や理念に共感し、深く理解したうえで「うちの会社らしい行動」として基準にできます。

他には、社員の階層によって求める行動や能力を設定します。経営幹部、部長、課長、主任など、それぞれのレイヤーによって企業が社員に求める行動や能力を明示します。職種によって求められる能力や技術は異なりますので、営業や管理職等、職種別に求めるものを設定します。最近では、IT技術に関する知識やスキルは特に重宝されます。これらのような特殊技能を持った人材を獲得するためにIT技術に関する知識やスキルに関することを人事制度に盛り込む企業が多く存在します。

目標達成という要件設定もあります。この項目は、企業が社員に対して最も強く望むものではないでしょうか。個人の目標達成だけでなく、各部門やセクション単位で目標達成を企業から求められます。

②評価は、①要件で提示された「企業が社員に対して求めるもの」について、どれだけ達成できているかを測ることです。評価には人材育成の側面もあり、この評価が良ければ給料や賞与に反映され、社員のモチベーションが高まります。評価は今まで行ってきた仕事の結果を評価するという「過去」についての事柄です。さらに、過去の仕事で得た成果やプロセスをしっかりと評価することで、未来の仕事へのやる気を引き出すこともできます。

③給与は、行った仕事の評価に基づき給与額を決定することです。給与体系は基本給とそれ以外の手当や賞与で構成されるのが一般的です。手当や賞与の部分は短期的には変動しやすい部分ですが、不安定な給与水準は社員の経済的な不安につながります。社員が安心して仕事に集中するためには、急激な変動のある給与形態は望ましくありません。手当は定義をしっかりと決めておくことがポイントです。長時間労働に対する手当なのか、業務の危険度に対する手当なのかなど、明確にしておきましょう。一度給付を決めた手当は簡単には廃止しにくい事情もありますので、慎重な運用が求められます。

④育成は、①要件で設定した「企業が社員に求めるもの」を達成するために、社員を成長させていくことです。給与や賞与自体をインセンティブとして、社員のやる気やパフォーマンスを上げていくことができます。

①要件、②評価、③給与、④育成の4要素をバランスよく掛け合わせることで、社員のやる気やモチベーションを引き出し、組織の力を底上げする人事制度が理想です。

人事制度で組織のモチベーションをあげる

人事制度の刷新を行なっているある企業の社長は、人事制度を設計する最大のポイントとして、「社員の給与差を説明できること」をあげています。つまり、社内での評価の基準が明確であり、AさんとBさんに賃金差がある理由を誰でも理解でき、納得できる状態です。自分の仕事が会社に正当に評価されている感覚があれば、モチベーションやパフォーマンスは上がり、離職率も低下する好循環が生まれます。改めて自社の人事制度を見直し、さらにブラッシュアップして、組織全体のパフォーマンスを底上げしましょう。

 

参考:

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